Nagoya Archi Fes 2024 審査会

中部地区の建築系の学生による卒業設計のコンペ Nagoya Archi Fes 2024(中部卒業設計展)に、1日目審査員として参加させていただきました。約100点の応募作品は、テーマ、計画地、設計する建築物の用途など全てが異なり、とても見応えのある展示でした。

1日目は10名の審査員がそれぞれ個人賞を選出し、さらに全体で1作品をNAF賞に選出するという流れです。審査員は、ほとんどが建築がご専門の方たちで、そんな中に畑違いの私が参加させていただくということで、緊張しつつ審査させていただきました。

全体として、大きな構築物をしっかりと作る、王道の建築らしさを感じる作品と、何も建てない、あるいは建てるとしても最小限の造作しかしない、建築をより広義に解釈している作品、という大きく2方向の流れがあるように見られました。後者からは、産業革命から続いてきた物質主義をこのまま突き進んでいくことの限界、言うなればパダライム・シフトを、20代の学生たちも肌で感じ取っているのだということを感じられました。

もちろん、今後も確固とした構造物が、ある一定程度は必要だということは言うまでもありませんが、より多様な建築のあり方、建築に携わる人のあり方を考えていかなければならない局面に差し掛かっているし、それはデザインについても同じだと感じます。

個人的には、最近のリサーチテーマである「水」と関わりのある提案に目がいきました。意外にも3〜4点、水辺や浄水場、配水棟などを計画地とした作品があり、その中から私の個人賞として、名古屋市立大学の松崎朱音さんの作品「浄水場農場のすゝめ」を選ばせていただきました。

浄水場という普段私たちがあまり目にすることのない生活インフラの施設を市民農園としても活用することで、水との距離を縮め、より開かれた公共空間へと変容させる提案です。

技術的課題はいろいろとあるのだと思いますが、緩速濾過システムとの組み合わせは規模を変えて、さまざまな空間・環境へ展開できるかもしれないという可能性も感じました。

一度にこれだけ多くの作品が並ぶ中で、適切な言葉や視覚表現、立体模型でいかに伝えるか、伝わるか、というのはある程度回数をこなさないとわからない。また建築という分野では、実物というのは実際に建てるしかなく、プレゼンテーションの段階では、どこまでいってもスケールモデルを見ながらの話になってしまうところに、難しさがあると思いました。

さらに、テーマを選んだ思想的・個人的背景やテーマに対するその人の態度が審査員それぞれの思想や設計(デザイン)における態度とどの程度重なるかということが、評価を大きく左右したような気がします。

とはいえ、普段なかなか経験することのない貴重な機会をいただき、審査員に選んでいただいたNAF実行委員の皆さんには感謝いたします。

また準備や当日のオペレーションなど、学生だけとは思えないチームワークの良い仕事ぶりが、とても印象的でした。実行委員の皆さん、お疲れさまでした。