日本にある公園の水飲み場といえば、上向きの蛇口と下向きの蛇口の2つがセットになったものが主流である。上向きのものは、直接口をつけて水を飲むためにデザインされており、蛇口がいわゆる風通の管のものもあれば、噴水のように勢いよく出るよう、小さな穴が空いているものもある。
しかし、公園での観察を続けていると、上向きの蛇口から直接水を飲む行為は、それほど多くは見られない。
上向きの蛇口よりも、下向きの蛇口を使って手を洗ったり、何かモノを洗ったり、犬に水を飲ませたり、といった光景が数多く観察された。
公園で子供たちが遊ぶ側には、木の切り株の上に水筒がいくつも載せられている。飲み物は各自自宅から持ってくるもので、公園の水道水を飲むことはあまりしないようだ。学校に通う子供たちも、みな一様に水筒を首から下げている。
水を飲みやすいように上向きの蛇口がデザインされているが、そこに別の使われ方が自然発生的に生まれ、風景として観察されている。
– ハンカチやタオルなどを蛇口に当てて湿らせる
– 蛇口に空のペットボトルを逆さまに当て、勢いで吹き出す水を入れる(この水を飲むのかは不明)
– 蛇口に手を当てて手を洗う、冷やす
– 小さな子が蛇口に手を近づけ、出てくる水で遊ぶ
使わないのではなく、新たな使い方を発明している、といえる。
そして、下向きの蛇口を使うために、大人ならばかがまなければならないが、上向きの蛇口は手元に近く、自然に手が伸びて、使いやすい位置にあるともいえる。
人々がもともとのデザインの意図を知りつつ、別の用途に転用しているのはさまざまな物で見られる行為だが、公園の水飲み場のデザインは、この上向きの蛇口と下向きの蛇口の組み合わせをスタンダードとして、今後も存在し続けるのだろうか?または、人々の行動・行為に合わせて、新たなカタチが誕生するのだろうか?