exhibition “FOOD & BABY”

農業コミュニケーター・きひらまりこさん(maru communicate)企画・主催の展示「FOOD & BABY 世界の赤ちゃんとたべもの」展で、会場構成・展示デザインを担当させていただきました。

展示は、きひらさんが2018年9月〜2019年1月にかけて行なった、離乳食に関する世界各国のお母さん・お父さんへのインタビューやメールによる取材をもとに、世界の離乳食や離乳食に対する考え方・文化の多様性を伝えるもの。

展示は大きく2つのパートに分かれています。1つめは、会場にランダムに配置された展示台。「はじめのひと口」、「味」、「量」など計8つのカテゴリで、取材に協力してくれた人たちの実体験や考え方、感じたことなどを、写真やイラスト、実物を交えて紹介しています。

2つめは、壁に展示した15種類の離乳食の写真。こちらは取材での情報をもとに、世界各国のさまざまな離乳食レシピを再現し、撮影したものです。日本の「十倍がゆ」のようにその国の国民食的なものもあれば、「これは、どのくらい一般的なのか・・?」と思ってしまうようなメニューもあえて含まれています。

取材をした国は20ヶ国以上で、中には母国とは異なる国で子育てをしている人もいて、国によって食文化や経済状況が大きく違うだけでなく、個人レベルで影響を受けている文化や環境がさまざまです。

展示の構成とデザインを考える上で大切にしたのは、情報を選択しすぎないように、また、「これだ」という決めつけや押し付けをしないように、ということ。国籍や地域である程度はカテゴライズできるものの、最終的には、「100人いれば、100通りの離乳食があり、正解はない」ということがわかってきました。展示でもそうした個人レベルでの「多様性」が伝われば良いというのが、きひらさんとのやりとりの中で明確になっていきました。見る人がそれぞれの見方をして、想像したり、気づいたり、疑問に思ったりしてもらえるのが一番大切であると。

その上で、一つ一つの情報が、初めて見た方にもすんなりと入っていくように、個々の要素が引き立つようなデザインを心がけました。

きひらさんの言葉にもあるように、展示を通して、離乳食で悩む人たちに「Discursive Space(まあ、いいやと思える心の空間)」を持ってもらえたら、そして離乳食に直接関わりのない方にも、食の世界の奥深さや多様さに面白みを感じていただけたら何よりです。

エントランス。インタビューやメール取材の協力者の、現在の居住地を世界地図で表示。

ランダムに並べられた展示台。小さな子どもたちにとっては、迷路のような遊び場となった。

展示台には、インタビューの内容をいくつかの切り口でグルーピングして並べた。カード状の紙をクリップで留め、ランダムなサンプルを集めた取材の方法を可視化。

経験談や感情など、エモーショナルな情報に加え、離乳食をあげた期間や言語ごとの「離乳食」という言葉の定義といった客観的な情報も紹介。

言葉とともに、エピソードにまつわる物や写真も展示。

展示台側面に設置した、食べものを口にする赤ちゃんの写真パネル。

インタビューやアンケートの情報を元に再現した離乳食の写真を、材料や調理に要した時間、レシピにまつわるエピソードとともに紹介。(レシピ再現・撮影:Chizu Ogai)

浜松で直接インタビューをした人たちのインタビュー集。展示では紹介しきれなかった、パーソナルなストーリーを読むことができる。

会場風景。

photo ©鈴木陽一郎

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企画・取材・リサーチ:maru communicate
展示構成・デザイン:Chizu Ogai
展示会場:天野寛志建築計画事務所 1F ギャラリーあ(静岡県浜松市)
展示期間:2019年2月9日ー24日
主催:maru communicate
special thanks: 公益財団法人 浜松国際交流協会(HICE)/ Van Hall Larenstein応用科学大学(オランダ)

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