若手アーティスト14人によるグループ展『ここに在るということ』の展示カタログを編集、デザインをさせていただきました。
展示では、会場が「庭」と「部屋」という二つのスペースに分けられていて、作品がまるで生活空間の中にあるように、混沌とした状態で散りばめられていました。アート作品と、普段使うものや道具の境界線を敢えて取り除くという試みは、「作品をきちんと見せる」展示としては異例、かつ多くの難しさがあるものだと思う。とにかくどこからどう見たら良いのか、良くも悪くも、正しい理屈は存在しないという感じです。
そして、この展示のもう一つの特徴は、会期中、毎日作品の位置が変化していくということ。参加作家たちが、決められたルールの範囲でお互いの作品を動かしていってよい、という取り決めがなされていたのです。
会場はさらに混沌をきわめ、どれが誰の作品なのか、どれが作品でどれが作品でないのか、ぱっと見ではわからなくなっています。
そんな挑戦に挑戦が重ねられた展示は、アーティストのエネルギーがぶつかり合い、原始のアートってこんな感じだったのかな、と思いを巡らせてしまいます。アートとは、そもそもきれいに整頓されたお行儀のよいものではなく、人間の「創りたい、表現したい」という根源的欲求の表れなのだよな、と。
黄色の表紙に開いた穴からのぞき見る、彼らの庭と部屋。そこには、予測のつかない混沌があります。
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名古屋市文化基金事業 ファン・デ・ナゴヤ美術展2020
ここに在るということ
会期:2020/1/9-1/26
会場:名古屋市民ギャラリー矢田
主催:ファン・デ・ナゴヤ美術展2020『ここに在るということ』実行委員会
公益財団法人名古屋市文化振興事業団
後援:名古屋芸術大学
図録制作
ディレクション:須藤冬朗
デザイン:小粥千寿