Edible Classroom トークイベントを開催しました

2024年10月26日、SLOW ART CENTER NAGOYAにてEdible Classroomのトークイベントを開催いたしました。

ゲストは、エディブルメディア代表で一般社団法人エディブル・スクールヤード・ジャパンの理事としても活動されている冨田栄里さん。食とコミュニティや食の主権、都市で食べ物を自給自足することなどについて、Edible Classroomの展示の感想などと共にお話しいただきました。

まずはじめに、冨田さんと映画の出会いについて伺いました。

冨田さんは、この映画が公開された2014年頃、エディブル・スクールヤード・プロジェクトの学校菜園について勉強しようと思い、拠点であるアメリカのカリフォルニア州バークレーに引っ越すことになっていたそうです。そんな折に、たまたまオンラインで見つけたのがこの映画。

その後、実際にバークレーに住み始めたら、映画に登場している人物が友人のパートナーだったり、監督が知り合いの知り合いだったりと、映画の中の人々やコミュニティとリアルに繋がっていったことを話してくださいました。

そして、2015年に日本で開催された有機農業映画祭で上映をすることになり、翻訳と日本での配給を手掛けることになったそうです。映画祭後から現在に至るまで、日本各地で上映会を開催し、オンライン配信も地道に続けていらっしゃいます。

日本で配給し始めて10年近く経ちますが、特にコロナ禍以降、映画に対するリアクションが増えたとのこと。その理由について、市民の手で食にアクセスできる、安全で安心な食べ物を手にいれることができる、食の平等など、「食の主権」について日本でもより多くの人が気に掛けるようになってきたことから、映画が作られた当時、すでにアメリカで起こっていた状況が日本でも現実になってきているという背景があるのではないか、ということです。

いずれにしても、長い間、この映画とそこに込められたメッセージを伝え続けていらっしゃることに、感銘を受けました。

映画との出会いをお伺いたあと、今年9月にエディブル・スクールヤード・ジャパンの研修でバークレーを訪問した際の写真をスライドで見させていただきながら、最近の現地の様子も教えていただきました。

食を通じて、私たちの命は大きな命の循環に繋がっているんだ、ということを知って、とても安心感を得たという冨田さん。それを全ての子どもたちにも感じて欲しい、という思いから、エディブル・スクールヤードの活動に共感し、同団体に参画されたそうです。

エディブル・スクールヤードは、学校の中に菜園やキッチンがあり、いわゆる算数や社会、理科といった既存の授業を食や農を通して学んだり(社会であれば、歴史に絡めて、いろいろな地域や国の料理を作って食べたり)、自然に接することを通して感性や知性を育む「全人教育」を実践しています。

不登校の子たちが増える中で、教室以外の居場所として菜園の可能性にも注目が集まっているそう。

そして何より、自分が生きていくためのエネルギーがどこから来ているか?ということを知っていると知らないとでは、生きていく上での“自立感”も変わってくるし、誰から何を買うか?というお金の使い方(すなわち、価値観)にも影響してくるのではないかと、冨田さん。

冨田さんのお話を聞いて、「食」ついて知り、実践し、考え、話すことは、私たちの生活の隅々にまで影響を及ぼしてくるということを改めて感じました。

日々、忙しく過ごしていると、自分が食べるものについてじっくりと考えたり、お金で買う以外の手段をすっかり忘れてしまったりします。今回、数ヶ月間、屋上菜園をやってみても実感しましたが、学生も忙しいし、私自身も常に時間に追われている毎日です。

忙しい人たちや、そもそも興味がない人たちにも、食に対する意識を向けてもらえるよう、生活動線や社会、コミュニティの中で小さな「きっかけ」に出会えるデザインがあると、少しずつ私たちの行動が身体レベルで変わっていき、個人の意識が変わり、やがては社会全体も変わっていくのではないかと思いました。

最後に、食や農の課題、より良いコミュニティづくりのために、デザインは何ができるか?という質問には、編集やビジュアル表現によって、物事をとてもわかりやすく伝えることができる、デザインはとてもパワフルなツールですね、と話してくださいました。

冨田さん、貴重なお話をありがとうございました。

ゲストの冨田栄里さん。
トークの様子。
展示や菜園をメンバーが冨田さんに説明する様子。
展示や菜園をメンバーが冨田さんに説明する様子。
展示や菜園をメンバーが冨田さんに説明する様子。
展示や菜園をメンバーが冨田さんに説明する様子。