前期実習@京都市立芸術大学 終了

講師をしている京都市立芸術大学での前期の実習が終わりました。

今年度は前期に全4回でミニ課題を行ったあと、後期に全10回で本課題に取り組んでもらうという構成。昨年度、いきなり「単位」という大きなテーマではじめたら、やはり戸惑ってしまった学生も多かったので、その反省もあり、今回は少し具体的な課題からはじめてもらうことにしました。

前期4回では、リサーチして何らかの情報をもののデザインに落とし込み、全体としてストーリーを伝えるという手法について、まずは流れを掴んでもらおうと、「綿(コットン)」をこちらからテーマに指定。前半で歴史や生物学、栽培地域のこと、環境問題などいろいろな側面から「綿」ついて調べてもらい、後半はその中の1つ、または2つの情報を用いてプロダクトのデザインに活かしてみる、という具合です。

初回に伝えたのは、’モノに「メディア」としての役割を与えよう’ということ。

色や形、素材によって、どんなモノもすでに何らかの「情報」を発してはいます。そこをより意識的に、またリサーチから得たある程度客観的なデータを使うことで、全体としてそのモノや素材にまつわるストーリーを伝えるモノになるのだということです。

ごくシンプルな例で言えば、世界の綿の毎年の生産量があるとして、その数字をハンカチのサイズに落とし込んだとしたら、年ごとに違うサイズのハンカチが出来上がります。そこにその年の年号(’2018’など)を刺繍したりすれば、その年だけのスペシャルなハンカチになったり。

そんな感じで、モノのサイズや色、形、素材などが何かの情報に基づいていることで、ある意味、勝手にデザインが出来上がります。もちろん、それだけでは不十分で、ほかにもデザインする要素は山ほどあるのですが。

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そんな話を踏まえて、全4回は以下のような流れで実施しました。

1回目:オリエンテーション、参考になりそうなデザイン作品の紹介、綿についてどんなリサーチの切り口があるか、ポストイットに書き出し。

2回目:1回目のリサーチの切り口リストから、各自気になるテーマについて文献などを調べてきた内容を発表。

3回目:プロダクトのデザインに落とし込むアイデアとストーリーを発表。今回は大きな括りとして、「袋(ふくろ)」をデザインするよう指定。

4回目:ミニプレゼンテーション。

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プレゼンを終えての感想は、それぞれ時間のない中でも切り口を絞ってアウトプットまでできていた例もいくつかあり、まずは少し伝わったかな、という印象です。

やはり、最後のプレゼンを入れて【4回】という限られた時間の中で、着地点をうまい具合に見つけられるかが大きなポイントでした。「リサーチ」という言葉が先行して、なんだか大発見をしなければならないような気になってしまったりする場面も。

そして、日本では身近にあまり栽培されていない植物(素材)がテーマということで、どうしてもインターネットの情報に頼ってしまう傾向も否めません。結果として「え〜、それホント?」というような話になってしまったり・・・。綿製品としてはいろいろと身の回りに溢れているわけで、そういう意味ではリアルで身近なのだけど、ついついネットで検索してしまう。そこが大きな落とし穴かもしれません。

一方で、時間を切ることで、まずは一回、形にしてみるところまで無理やりでも持っていくことで、学生にとっても私にとっても、どこがどう良かったか、どこをもっと改善すれば良いか、ということがかなりクリアになった気がします。一旦終了しましたが、もう少しブラッシュアップしたり、最後のアウトプットにたどり着けていない学生には、とりあえず形にするところまでやってもらおうと思います。

後期は近場のフィールドに出て、もう少しじっくりとリサーチをしてもらう予定。10月からですが、少し涼しくなっているといいなあ。