Foodscape We are what we eat

次回の「わたしたちのたべもの」プロジェクトのインスピレーション探しで、最近(いつもですが・・・)食べもの関連の本を何冊か読みました。

その中で、印象的だった『Foodscape We are what we eat』(アーツ前橋)。この本は2016年に群馬県前橋市にあるアーツ前橋で行われた同じタイトルの展示のコンセプトブックです。

「食」にまつわる、生物学・文化人類学・社会学・経済学などなど、さまざまな切り口の問題提起が、ビジュアルを通して感覚的に発せられていて、とても刺激的な内容でした。

その中に書かれていた、生物学者の福岡伸一さんの文章が、食べものについて私たちがより注意を払ったり、考えたりする意義を示唆しているようでした。

食べたものは、エネルギーとなって消費されるのではなく、一旦、生物の体を構成する細胞の一部となって、体にしばらくの間とどまる。それで、次の食べものが取り込まれると、それと入れ替わりに対外に排出されていく」というような記述がありました。具体的には、マウスに、ある特殊な加工をした餌を食べさせ、その餌の成分がマウスの体内をどのように移動し、とどまり、また移動していくかを観察して明らかになったそうです。

福岡さんの提唱する「動的均衡」を象徴するエピソードです。

この本のタイトル通り、「We are what we eat(私たちは私たちが食べたものでできている)」ということを証明する話で、食べものが実際にほんの少しの間、体の細胞の一部になるのだ、ということを改めて再認識させられました。だから、食べるものは大切なのだと。

この文章を読んだ直後、電車に乗っていたときに私の席の前に立った20歳そこそこのカップルの会話が、この福岡さんの話と妙にリンクしていて、ついつい夢中で聞き耳を立ててしまいました。

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g=girl,  b=boy

g. 夜遅く食べると太っちゃうんだよね。だからさ、なるべく晩御飯は8時前くらいに食べて、そこからは寝るまでは食べないの。

b. へえ〜、そうなんだね。

g. あのさ、ご飯食べた後、一瞬体重が増えるんだけど、その後しばらくすると、寝る前にはまた元に戻るって知ってた?

b. えっ(驚)、そうなの??

g. そうなんだよ。すごいでしょ。

b. え、それって、排泄とかじゃなく?

g. ちがうちがう、排泄とかしなくても戻るんだよ。食べものが体に入って、エネルギーになってるってことだよね。

b. え、でもさ、食べものってこういう塊じゃんね。

g. そんな単純じゃないって(笑)。 それが胃で分解されて細くなるでしょ。それが、全身にまわってエネルギーになるんだよ。

b. えー(驚)、すごいー。

g. だって、食べた分だけ、毎回体重が増えてったら大変なことになるでしょ。

b. そっか。確かにそうだ。すごい!

g. すごいでしょ。私、インテリだ(笑)。

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「食べたものが体にとどまる」というところまでは言及していないけれど、「ダイエット」という彼らの世代らしい日常的な話題から、食物と人の体の関係性についての深淵な話題へと、軽やかに広がっていった二人の会話。ちょっぴり得意げに話す彼女と、彼女の言葉にひたすら驚きつづける彼氏に、なんだか微笑ましくなりました。